ISSUE 2 ウイスキーと、女子。

香るオンナ。

自分らしい香りを求めて、元コスメバイヤーの桐生綾子が語る。

香りへの興味

嗅覚を鍛えることは出来る、気がする。
以前、私はコスメティックバイヤーを担当し、スキンケアからボディケア、ヘアケアに至るまで全ての商品を選んだ。洋服とはまた異なり、女性を内側から美しくしていくこの仕事に携われたことを、今でもとても誇らしく思う。
その中でも特に興味をそそられたのは、'香り'だった。香りは全ての商品にあり、香りがないものにも'UNSCENTED'(無香料)という名前がある。ひとつの商品にひとつ必ずテスターがあり、テクスチャーや香りを試すことが出来る。それくらい香りはコスメにとってとても大切で、逆に好みではなければ、たとえ効果があっても選ばない。

「香り」と「におい」

香りの表現方法はとても繊細。コスメの商品において「におい」とは言ってはいけない、「香り」。「におい」でも良い意味では「匂い」、あまり良くない意味では「臭い」と、漢字も異なる。「香り」は花やイメージの良いものを連想させるものであり、「におい」はもう少し人間的で、生活に密着したもの。それに気付いた私は、人生がより深く豊かになると喜んだ。仕事以外でも香り・においに関する表現方法をそれぞれに合わせて変え、ひとつひとつの言葉の響きや余韻、またその言葉を放った時の周囲の人々の反応を見て楽しんだ。

嗅覚は鍛えられる

全てのものに香りはある。私は仕事以外でも様々な香りやにおいを嗅いだ。町の中からただよってくる焼き鳥屋さんの香ばしい匂い、太陽の下で洗濯物を広げた時にひろがる幸せな石鹸の匂い、おばあちゃんの家でごろごろ過ごした時に感じる畳の井草の匂い。香り・においがないものなんてない気がする。売れ行きを左右してもおかしくない香りを嗅ぐことは、仕事をしていた上でとても大切な作業だったし、仕事が好きな私にとってその行為はプライベートでも、無意識に行う行動の一部となった。沢山の香りを嗅ぐことで、様々な香りの種類や違いを知ることが出来たし、今まで以上に嗅覚が敏感になった。
それは良い意味でも悪い意味でも、香りを嗅ぎ取ることが出来る。例えば、最近まで買い付けの為にパリへ出張に行っていたのだが、行くたびに「日本の駅はどこもきれいに保たれているなぁ」と感じる。それに比べてパリの駅は、全ての場所ではないが結構'臭い'がきつい。嗅覚の鋭い宿命たるもの、冬はマフラーに鼻をもぐりこませて移動することが多い。このように、色々な香りを嗅ぎ取ることが、出来てしまう。

見えないファッション

私は今、洋服やシューズ、バッグに至るまで全てをセレクトするファッションバイヤーだが、香水は欠かさない。以前コスメを取り扱ったことで、香り、更には香水の世界の奥深さを知った。香水は見えないファッションだと思う。洋服は遠くからでも見えるが、香水の香りは近づいた時や通り過ぎた時にしかわからない。しかも、その人本来が持つ匂いや体温によって香りは変化し、更には時間によって変わっていくので、同じ香りは一つとしてない。一人一人の個性をたっぷりと含んだ、世界に一つだけの香りを身にまとった時、見えないスタイルは人々を想像させる。

自分らしい香り

女性は、変身願望が強い生き物だと感じる。女性の人生の選択肢は多く、それは結婚や出産、仕事とのかかわり方など様々。ファッションもスタイルやアイテムまで選べる幅がとても大きく、それがファッションの楽しさであると私は思っている。選ぶ洋服によって自分自身の気分が上がったり、今日は友達と会うからラフでカジュアルなスタイルを選ぼうだとか、デートだから女性らしいワンピースを選ぼうなど、ファッションによって色々な自分になることが出来る。
香りもその一部だと思う。つけている香水によって相手からの印象が変わったり、自分の気持ちがリラックス出来たりする。私は気分や行く場所によって、つける香水を選んでいる。例えば、元気を出したい時や与えたい時は、オレンジの香りが入った香水を選ぶ。柑橘系、中でもオレンジの香りは楽観性と楽しむ感情を与えてくれる効果がある。これをつければ私も、またそれを香った周りの人たちも元気になる。なので、朝つけることが多い。また、夜食事に行く時は、ブランデーやスパイスの入った香水を選ぶ。薄暗い雰囲気のバーでこの香りを私も相手も香れば、お酒を口にする前から、香りに酔いしれ楽しい大人の時間になる。
自分らしい香りの選択と、自分にしか出せない香りが交わった時、目には見えない色鮮やかな世界がそこに広がる。

香る時間と、
ウイスキーはいかがですか?

元コスメバイヤー桐生さんの香りのエッセイで、自分らしい香りを見つけたいものですね。リラックスタイムに、ちょっとオトナなウイスキーをどうぞ。

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ウイスキーと、女子。

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